猫だより

ホームへ戻るバックナンバー


2016年2月21日

■ユズのいた年月を振り返る

ユズとは10年とちょっと、一緒に過ごしたことになる。

10年というのは、短い年月ではない。子猫が家に来て、成長し、そして人間よりずっと早く歳をとった。

何事もなければ、ユズはこれから長い老後生活を送るはずだった。

 
***
 

猫たちにとっても飼い主にとっても、ここ数年のいちばん大きなイベントは引っ越しだっただろう。

戸建てに越してきた我々はさっそく、猫たちのために猫庭をつくった。

猫庭のユズとマーボ

マンションに住んでいた頃は「ペットは2匹まで」という規約を守っていたが、そのような制限もなくなったため、3匹めの猫を迎え入れた。

チャッピー1歳、ユズ10歳(2014年夏)

マーボやユズがもっと若いときにチャッピーが来ていたら、もう少しすんなり馴染めたかもしれない。でもその場合、それはもちろんチャッピーではなかっただろうけど。

チャッピー1歳、ユズそろそろ11歳(2014年冬)

ユズはこうやってレインボーストーブの前にたたずむのが好きだった。

チャッピー1歳、ユズ11歳(2015年春)

大人猫たちとチャッピーは、仲が良くないとはいえ、一緒にいられないというほどでもなかった。

ユズはペッパー君に会ったことのある、数少ない猫の1匹だったろう。

ペッパー君を見て驚くユズ:「なんでちゅ、あれは!」

ユズは不審な物体を避けて歩いた。マーボはペッパー君を完全無視。チャッピーは恐ろしさのあまりそばに寄ることもできなかった。

三者三様の性格を持つ猫たち。しかし3匹がそろって全く同じ反応を示した事例もあった。私が初めてオカリナを吹いたとき、猫たちがにわかに色めき立ち、3匹とも私に向かって突進してきたのだ。

オカリナを吹くのまわりをぐるぐる回る3匹の猫

 
***
 

2015年の夏にユズに危機が訪れ、その後持ち直し、食欲も出て元気になってきたのを見て、飼い主は期待した。ユズはこのまま冬を乗り越え、春を迎え、次の夏が再び巡ってくるまで、なんとかいけるのではないか …。

そしたら今回の反省を踏まえて、ちゃんと部屋を冷房し、暑さをやわらげるためユズの長い毛を切ってやろうと思っていた。

10月、フィットするソファの上のユズとマーボ

ユズが食べ物を一切口にしなくなったのは、この数日後のことだった。

ユズはまだ死ぬような歳ではなかった。腎不全の末期だったが、自分の身に起こっていることに対して、ユズは合点がいかない様子だった。「なんで歩けないのかちら。おかちいわ」。いぶかしげな目で私を見た。

ユズは持ち前の辛抱強さで、懸命に抵抗していた。昔から、ユズは自分の身に何が降りかかっても怒ったり恨んだりすることなく、嵐が過ぎ去るのを待つようにじっと耐える、そういう猫だったのだ。

でも今度は勝ち目のない戦いだった。ユズが可哀想でならなかった。

 
***
 

もう少ししたらお骨を庭に埋めて、土にかえす。冬の庭は北風がごうごう吹いて寒そうだから、春まで待つ。

そして何かかわいい花の種をまく。ユズは花のような猫でしたからね。


前へホーム次へ
猫だよりバックナンバー