猫だより

ホームへ戻るバックナンバー


2018年1月7日

■ミーコとマーボを失いました。マーボのこと

火曜日。ミーコが亡くなったその日、マーボとチャッピーを動物病院に連れていった。

先生(いつもの先生と違ったが、やはり腕のいい先生だった)は、マーボの状態が「非常に悪い」と言った。体温は36度しかなかった。とりあえずの措置として、補液と注射3本。血液検査と通院治療は断った。

チャッピーは熱があった。チャッピーはおびえて、診察台の上で腰が抜けてしまい、か細い声でピャー、ピャーと鳴いた。熱さましなど注射3本。

夜、チャッピーとマーボは、浴室の風呂フタの上で寄り添って寝ていた。マーボは生命力の抜けたような、何か妙な感じだった。そのまま死んでしまうようにも思われた。

でもまだだった。マーボはその後、あちらこちらへ歩いては、「なああー! なああー!」と怒ったように鳴いた。現状がひどく気に食わないのか。あるいはただ不安だったのかもしれない。

翌日の水曜日、チャッピーの薬をもらいに動物病院へ。午後は、マーボをひざにのせて仕事をした。ひざにのっているとマーボはおとなしかった。

夜、チャッピーとマーボはまた、浴室の風呂フタの上で寄り添って寝ていた。


就寝時、電気を消してしばらくすると、マーボが怒ったように、何回も鳴いた。「マーボ、どうしたいの?」と聞き、付き添って歩いてみるが、マーボにもよくわからないのだろう。

マーボを落ち着かせるのをあきらめてベッドに戻ると、マーボがやってきた。そしてベッドの上にのり、布団の中に入ってきたので、私は驚いた。

マーボは3年ほど前から、寝室にほとんど立ち入らなくなっていた。ここ1ヶ月はどういうわけか、再び寝室に入るようになり、布団の上に座ったりしていたが、人間が寝ている布団にもぐり込むことはなかった。チャッピーがほぼ必ず私の横にいたからかもしれない。

その夜、私はチャッピーとマーボに挟まれながら寝ることになった。

ときどき、マーボの脇腹に手をあてて、呼吸の様子を確認した。マーボはとてもゆっくり、静かに、呼吸をしていた。気づけば呼吸が止まっていたりするのではないかと心配だったが、止まることはなかった。マーボは明け方までずっと布団の中にいた。

木曜日。ミーコの火葬。花をちりばめられて横たわるミーコはとてもかわいく見えた。夫といっしょに、ミーコに最後のお別れをした。遺骨をもらって帰る。

マーボのことが心配だ。帰ってきて、見ると、マーボは長座布団の上にいた。細かく震えている。体温はさらに下がっているようだ。私を見て、歩きたそうに前足を動かすので、体を支えて、歩かせてやった。マーボは歩き、寝そべり、その場所がやっぱり気に食わなくてまた歩き、なかなか居場所が定まらなかった。

ようやく、夫の部屋の窓際に落ち着いた。日の光を浴びて、暖まったのか、だいぶ楽になったように見えた。

木曜日、午後1時ごろ(撮影は夫)

猫の会の方からミーコのために、綺麗な花が届いた。夫はまた泣いてしまった。


マーボが窓際から離れて、歩き始めた。

身体機能が徐々に失われつつあるのに逆らうかのように、マーボは何度も、立ち上がっては歩こうとした。

ユズのときと同じだ。いろいろ絶望的な状態なのに、マーボの生命の部分はがんばり続けていた。すべての身体機能が完全に失われるまでの時間は、私の目に、長く、辛いものに感じられた。

夜、チャッピーは浴室の風呂フタの上で、足拭きマットの右半分をあけて座っていた。しかしマーボはもう来なかった。

マーボは長座布団の上で横になり、とてもゆっくり、呼吸をしていた。ときどき、あえぐような呼吸をし、もがくように足を動かした。「マーボ、マーボ」と呼びかけながら、前足を軽く握った。またゆっくりな呼吸に戻る。呼吸はふっと止まりそうに見えて、止まらない。それが朝まで続いた。

金曜日。

午前9時半ごろ。マーボは静かに息を引き取った。14歳だった。


前へホーム次へ
猫だよりバックナンバー